小説
描きたいもの
boostしてくださった方につけさせていただいた名刺SSです。ありがとうございました!
絵は自由に何でも描くことができる。絵は自分が何者であるか判断しない。
そう言っていた少女が、今は目の前で楽しそうにキャンバス上に筆を滑らせている。その姿をみて、世界は少しずつ、ゆっくりとだが前へ進んでいるのだろうと思った。
「アルフェン? できたの?」
「いや……まだだ。もう少し時間をくれるか?」
そうして再び自分のキャンバスに向き合う。やはりどうしてもうまくいかないのだ。そう思っているとシオンはこちらの視線に気が付き、ふわりと微笑んだ。
――やっぱり難しい。その綺麗な笑顔に見惚れず、キャンバスに残すなんて。