未完
アルフェンとモブくんの話
アルフェンとモブ君の話。DLC、ED後
ペーパーか何かで書きたいと思っていたはず。
縄張りを荒らされた獣がどうなるかなんて、考えなくてもわかることだ。そんな事にすら気が付かなかったのかと思わず悪態をつきたくなった。
野営の準備をする中でペッパーが足りなくなり、それを近くで採取しようとアルフェンだけ離れたのが始まりだった。シオンがついてきてくれようとしたが、近場にあるだろうと思ったことと、アルフェンもまた一人でズーグルを対処できるくらいの力はあるため一人で向かったのである。
けれど二つ、予期せぬ問題があったのだ。一つ目は近場にペッパーがなく、想定していたよりも遠くへ探しに行かなければならなくなったこと。そしてもう一つは辿り着いた場所で、レナ人と思われる人物がズーグルの群れに囲まれていたことだった。
「あ……! た、助け……」
男は腰が抜けているようで立てる様子はない。白く上質な生地でできているはずのチュニカ・レネは泥で汚れている。その右手からは鉱石が転がり、それを換金しようとしていたのだろうか。
ダナ人と馴れ合いたくないと考えるレナ人はまだまだいて、このように街の外れにいることも珍しくなかった。今回はそのうえ、自らズーグルの縄張りに行ってしまったのだろう。奴隷として扱っていた人間から施しを受けるにはプライドが許さず、けれど自分たちのみで生活するには物資も金も足りなくなってしまった結果だ。
「……クソっ!」
レナ人とズーグルの間に入り込み、鋭い爪での攻撃を刃で受け止めて薙ぎ払った。逃げるように促そうとしたが、腰が抜けてしまいそうすることはできないようだ。
一体一体仕留めていくには数が多すぎて、無防備なレナ人が襲われてしまうだろう。アルフェンはそう考えると、背中の炎の剣に手をかけた。
瞬間、炎の剣は手甲ごとアルフェンの腕を焼き尽くすように燃え上がる。肌を焼く様な熱さを感じながら、振り上げる。
ふと、背後から声が聞こえた。恐怖を孕んだようなその声は、燃え盛る炎の中でもアルフェンの耳に届く。
「<炎の剣>……!」
その恐怖に歪む顔は、ズーグルではなくアルフェンを見ていた。それを知りながら、アルフェンは<炎の剣>を振り下ろした。
ズーグルを倒したのち、草原だった場所は石も焼けた荒野に一瞬にして変わっていた。レナ人の男はなんとか立ち上がると、アルフェンを見て叫ぶ。
「た、助けてくれたのか……? そんな、ダナ人が、ありえない……!」
「大丈夫か?」
「……俺は星霊力が弱くて治癒術は使えない。レナ人の中でも最底辺の暮らしをしていた。力が全てなんだ。あんただってそう思うだろう!? 辛くねえのかよ!」