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未完

○番Exitパロ

実況動画を見た時に書きたい~!となって書いていたものです。かなり途中。

 気がついた時にはその場所にいた。
 そんな曖昧な言い方でしか現状を説明できないのは、目の前の光景を夢だと思っているからであろうか。しかしじっとりと肌を包み込む感覚は確かに現実のもので、わずかな期待とともに浮かんだ考えはすぐに壊されてしまった。
 レナスアルマを手に入れシオンを荊から解放するための道中で疲労が見せた悪夢だろうか。このままこの場所に留まって何かが変わるわけでもない。仕方なしに足を動かすと、固い床とぶつかる靴の音が廊下に響いた。
 ここが仮にレネギスであるのならレナの研究員とすれ違ってもおかしくないはずだが、自分以外に音を発するものはいないかのように辺りを静寂が支配している。自分がここにいる理由も、この場所を作ったであろう何者かの思惑も分からず薄気味悪い。
 アルフェンが歩を進めると、曲がり角の先にはまた廊下が続いていた。壁にはいくつか貼り紙があり、それには王を作るための実験時に注意することやそのその実験結果などが書かれている。
 反対側の壁には固く閉ざされた扉が三つあったが、どことなく不穏な気配を感じたためそれを開ける気にはならなかった。天井を見上げると宙吊りの看板に「出口はあちら」と記載してあるのが目に入る。
 レネギスの技術によるものか、ぼんやりと光っている頼りない目印に従って歩いていたはずだった。けれどしばらくしてたどり着いたのは先ほどと全く同じ場所だった。
 貼り紙が複数と閉じた扉が三つ。ただひとつだけ異なるのは、一つ新たな貼り紙が増えていることだった。

「異変を見逃さないこと」
「異変を見つけたら、すぐに引き返すこと」
「異変が見つからなかったら、引き返さないこと」
「8番出口から外に出ること」

それしか書かれておらず、疑問を解決するどころか新たな謎を生み出すだけだった。異変とは一体。思考を巡らせていると、前方からゆっくりと歩いてくる一人の人間の姿が見えた。自分以外にも人がいたのかとやや安堵したのもつかの間、アルフェンはその人間へ向けていた足を止める。ぼんやりと虚な目をしており足取りは覚束ない。自分を拘束したものとはいえ、流石に目の前の様子がおかしい人間を放っておけるわけではなかった。
「あんた、大丈夫か?」
 アルフェンがそう呟くと、その研究員はじろりとアルフェンを視界の中心に捉えたまま動かなくなる。
「おい、どうしたんだ? ここって――」
 あたりを見回そうとした時、今まで目の前にいたはずのその男が、後ろを振り返った「そこ」にいるのである。ただただ虚ろな目でアルフェンだけを見ている。その姿はまるで亡霊のようにも感じた。
 そして暗転。目の前が真っ暗になったかと思うと、あの注意書きが書かれた貼り紙の前に立っていた。
 あれがおそらく異変だったのだろう。何が出てくるかたまったものではないが、あの注意書きが示す通り8番出口とやらから出ないとこの悪夢は終わらないようだ。
 仕方なしにもう一度歩き始めた。

 そして何度目かの異変を超えてアルフェンが廊下の角を曲がった時、そこには見慣れた人物がいた。ドレスアーマーに身を包み、綺麗な薄紅の髪をかきあげている。
「シオン!」
 その者の名を呼ぶ。声をかけられた人物はくるりと振り返ると、どこか安堵したような面持ちでアルフェンの方へ駆け寄ってきた。
「アルフェン! よかったわ。なんだか変なところに閉じ込められてしまったようで……」
「シオンもだったのか。一体ここはどこなんだろうな? 異変を探せと書いてあったが」
「わからないわ。だけれどきっと二人いれば対処できるはずよ。あちらの廊下の先に行ってみましょう。ほら」
 そうしてシオンは手を伸ばす。アルフェンがその手を握ると温かいと感じた。感覚が戻った体というのは都合が悪い時もあり、じっとりとした空気は少し肌寒いようにも感じていたため、その温かい手がなんだか嬉しいと思ってしまったのだ。
 自分より一回り小さなその手を握る。そんな幸せを今感じられるなんて。
 そこまで思いを巡らせた時、アルフェンは素早くシオンの手を振り解いた。荊による激痛からではない。いやむしろ、彼女に荊がないのである。
「どう、したの……?」
 目の前の人物は少しばかり悲しそうな表情をしてアルフェンに問いかける。それをみて心が痛んだが、アルフェンは背中の剣に手を伸ばしながらつとめて冷静な声色で言った。
「……必ず救ってやると思っているが、シオンにはまだ、荊が顕現したままだ。お前は誰だ?」
 そう言った時、目の前の異変は口角を不気味にあげて微笑んだ。